登山&のら湯-山道のあっち側

常布の滝下温泉

訪問データ

【訪問日・天候】

2000年秋 平日 曇り

草津には、温泉街から芳ケ平を経由して渋峠まで歩ける自然遊歩道があります。その途中に、日本の滝100選にも選ばれている、落差70メートルを誇る豪快な常布の滝があるのですが、その滝の下流に'それ'はあるという。

常布の滝下温泉までは、天狗山ゲレンデ下の駐車場脇から林道の突き当たりまで車で入るのが最短コースですが、行ってみるとそこは工事中のために途中通行止め。仕方ないので、スタートはゲレンデとゴルフ場の中間地点にある自然遊歩道の始まりからとなりました。おかげで、1時間以上余分に時間がかかることに。

歩く、歩く、歩く。登山のようにはさほどきつい傾斜じゃないけど、なんたって身体がなまっています。しかも風景も単調だから余計にきつく感じる。ぜいぜい息を切らしながら、歩く、歩く、歩く。心臓が喉からせり上がってくるんじゃないかと思うくらい、バクバク激しく脈打ちます。たった一時間の、しかも林道並の平坦な歩道で。情けなさすぎるこの身体。*写真(1)

やがて道の脇に、よほど注意していなければ気づかないほどの、僅かな踏み跡を発見。一度発見してしまえばそれは明瞭な踏み跡ですが、遊歩道からはかなりわかりづらい。そこから、大沢川に向かって崖のように急な斜面を下り始めます。*写真(2)

100メートル以上の高度差をイッキに下ります。帰りの登りのことは考えないカンガエナイ…。

やがて川音が近づいてくると、岩の切れ目からその滝が現れます。*写真(3)

常布の滝に比べれば小さな滝ですが、豪快な音をたてて流れ落ちている様はなかなかの景観。*写真(4)

滝の横、岩が欠け窪んだ部分に湯船がありました。

すごい、これ。ごうごうと流れ落ちる水の飛沫がかかるほど、滝に近い。ほとんど、滝の裏にあるようなもの。ひゃっほ〜!って漫画のような奇声を上げたくなりましたよ。*写真(5)

水しぶきがかかるので荷物は少し離れた所に置きます。服もそこで脱いでしまい、裸で岩場を乗り越えていざ湯船へ。

湯に身体を沈める。至福の瞬間。湯舟以外の人工物は一切ない。話し声も聞こえないほどの滝の音。自然との一体感。言葉にできないほどの幸せを噛みしめます。

もちろん、帰りの登りのことは、頭から追い払って…。


…っても、いくら考えなくても帰りの登りからは逃げられないわけで…。

至福のひとときを過ごした後、後ろ髪を引かれながらそこを後にし、またもや心臓をばくばく言わせながら急登を上がっていると、遠くで薮の鳴る音が。

ガサガサ、ガサササササササササ

100メートル程先の音の鳴る反対斜面を振り返ってみると…。真っ黒い物体が斜面を転がり上がって行きます。

ひ〜!熊だ!!

まあ、距離があったので怖いとは思いませんでしたが。

いや、それどころかぶりぶりとケツを降りながら駆けるその姿は愛らしくもあり。

それにしても、早ぇ〜早ぇ〜。もし追いかけらでもしたら、到底逃げられるもんじゃないな。鉢合わせしないよう祈る。あ、音を出さなきゃ。

なんてことを考えながら、熊除けの音出しとして口から出てきたのは、「ある〜日♪森のなっか♪♪」