奥羽山脈の北部に位置するのが八幡平。広大な山域に無数のトレッキングコースがあります。そして八幡平エリアは東北地方でも有数の温泉地帯であり、秋田と岩手に跨り有名な温泉が点在することでも知られます。
草の湯は安比岳の北西斜面に湧出している温泉です。その場所は地図にも明記されているのですが、実際に行くと非常にわかり難い。地熱発電調査によって近年その周辺の道路が大きく様変わりしてしまったことが、輪をかけてわかり難くしてしまった原因でしょう。最新の2万5千分の1地形図が必要です。
まずは安比高原スキー場を抜けて安比高原の奥から舗装された林道を車で先へ進みます。牧場を突っ切るため道路が縦横にあり、正しい道を見つけるのが大変です。調子に乗って走っていたら、いつの間にか兄川まで行ってしまいました。慌てて引き返す羽目に。
草の湯へ行くのは一応ちゃんとした登山道で、草の湯歩道と立派な名前も付いています。なのにその入口へ至る道路への案内板など一切無く、地図も当てにならなくて勘だけで辿り着きました。八幡平頂上まで6.4kmの地点に草の湯歩道の入口があります。*写真(1)
草の湯歩道はあまり快適とは言えません。季節的なものもあるのでしょうがぬかるみが多く、途中に湿地帯も通過します。この湿地帯が半分沈んだ木っ端が敷かれているだけで、尾瀬のようなしっかりした木道なんてありません。ミズバショウが群生していて下手に足を突っ込むのは躊躇われるから木っ端を踏んで歩きますが、ぐらぐら浮いてるし乗れば沈むしで悪戦苦闘しました。*写真(2)
道も荒れています。小さな小川を通過する所で崩れた縁に足を取られてコケました。立ち上がり腕に付いた泥を払おうとして、
ひ〜っ!
なんかの幼虫ってか蟯虫的なうにょうにょした虫が腕の泥から頭をもたげてコンニチハ。勘弁して欲しい。*写真(3)
季節柄残雪も消えてなく、道を完全に覆っていたりする場所もあります。踏み跡もないのでルートをロストしないように気をつけます。*写真(4)
1kmちょっとという情報だったので、まだ到着しないのはおかしいと不安に感じ始めた頃、硫黄の臭いが漂い始めて勇気づけられます。
暫くすると唐突に現れました。
登山道に立ち塞がる草の湯。登山道を少し外れてあると思っていましたが、もろ登山道のコース上。*写真(5)
隠れる場所もありませんな。そんでも入浴しないで帰るつもりなんて無しなんで、もし通りがかる登山者がいたらそちらに向けて尻丸出しの状態で服を脱ぎます。
すかさずブヨの大群が襲いかかります。しかし今日は慌てない。かかって来やがれとばかりに虫よけスプレーを取り出し全身に振りかけます。
…全く効きませんでした。奴ら必死すぎ。
普通の温泉だったら肩まで浸かればとりあえずブヨの驚異から身体は守れますが、まあ野湯の常でここもやっぱり尻しか浸かれない深さしかありません。ちょっとぬるめの湯に尻だけ入れて、登山道から人が現れないか気にしつつ、虫よけスプレー片手にシューシューと慌ただしい入浴となったのでした。