何を求めて温泉に行くのか?
癒し、療養、リフレッシュ。しかしなにより、これは旅全般に言えることですが、非日常感を追い求めてしまう。豊かな自然に陶酔し、柔らかな湯の中に手足を伸ばしながら、渓流の音と木の葉のざわめきに耳を傾ける。
ところが、何度も出かけるうちに、かつて感動した景色は急に色褪せて見え始める。非日常が日常に取り込まれてしまうのです。そして、新しい非日常を探し求め、より深みを追い始めることになる。
なんて、アホなことやってる言い訳をしてみたりする。
さて、かもしか温泉への出発は、広い駐車場から始まります。駐車場の奥から続く、すがすがしい高原を貫く一本道。ひんやりした朝の空気を吸いながら歩き始めます。*写真(1)
そのまま天空へ突き出して行きそうな爽快な遊歩道は平坦で、何時間でも歩いていられそう。季節は秋、ちょうどこの辺りの山腹まで紅葉が降りて来ています。つんと冷えた空気が頬に気持ちいい。*写真(2)
しかし遊歩道は、身体がじっとりと汗ばみ始めた頃に唐突に終わりを告げます。地面は足元で切れ落ち、深い谷底へと落ち込んで行く。*写真(3)
そこから、ガレた細い登山道を下り始めると、すぐに膝ががくがく笑い出します。帰りはここを登らなければいけない。憂鬱。*写真(4)
数十メートル、急激に高度を下げると、やがて沢に突き当たり、ここで下りは終了。*写真(5)
沢を越えるとまた登り、すぐに平坦な道へ。看板が現れ、そこには「登山者の皆様へ、ロバの耳コースは落石のため危険につき通行を禁止します。」と脅し文句が。いやなに、そんなことは事前調査で想定の範囲内さ。
やがて、コンクリの土台だけが残るかもしか温泉跡に出ました。*写真(6)
こんな車も通れない山中に旅館があったとは信じられませんが、コンクリを使っているということはそれなりの近代に存在していたということでしょうか。目指す場所は、この旅館に湯を引いていたと思われる源泉地帯。