黒部峡谷鉄道の宇奈月駅のそばに黒部川電気記念館があります。ここで仙人ダムの開発の様子が映像で見られるのですが、重い資材を担いで断崖絶壁を歩く姿には、よくもまあこんな無茶やったもんだなーと感心させられます。
んで、これがこれから行こうとしている水平歩道なわけであります。
吉村昭の「高熱隧道」を読んで、当時の工事従事者の通った道、そしてホウ雪崩のあった志合谷、美しく険しい谷あいでかつての難工事を成し遂げた人々の苦労を、ほんの片鱗でも感じられれば、というか感じたいって思い立ってから数年、やっと漕ぎ着けた今回の旅。だって遠いし、峡谷の短い登山シーズンに合わせてまとまった時間を作るなんてそう簡単にはできやしません。特に今回は温泉絡みで一人じゃないから余計に難しい。こんなこと、次は爺さんになってからじゃないと無理かもしれんです。
目指すのは高熱隧道の湯・阿曽原温泉。あわよくば仙人温泉まで。
【宇奈月〜欅平】
午前五時半、まずは駅前の駐車場でとりあえず900円×四日分の駐車料金を前払いしておきます。トロッコ電車が混むのか混まないのか微妙な時期だったんで始発に乗るために早めに行動を開始したのですが、まだ全然平気でした。もう2〜3週間も経つとすごいことになるんでしょうか。
時間に余裕があったので駅の立ち食いそば屋でそばを食い、工事関係者専用車両を見送ってから一般の始発が出発です。写真は帰りに撮ったので右の対向車が欅平方面へ向かう車両。*写真(1)
欅平で降りたのは十数人。殆ど観光客で登山者は少数でした。
【欅平〜志合谷〜大太鼓】
午前9:15、欅平を出発。雨がぱらつき始めます。
いきなりの急登。普段は日帰りばかりで荷物はせいぜい6〜8kg、今回はテン泊装備で18kg越え。垂直に思えるほどの傾斜をジグザグに高低差250mも登らなくてはならないので、でっぱなからこれはかなり堪えました。後ろから荷物の軽そうなトレッキングポール持ちのおじさんが追いついたので、道を譲ります。*写真(2)
ようやっと上まで辿り着くとほっとひと息。頭上では高圧線がブーンと不気味な唸りを上げ、雨も時折大粒が混じり始めてなんだか先行き不安感を煽ってるし…。
道が水平になっていくらも経たず、すぐに断崖のコースが現れます。*写真(3)
谷筋の向こうの断崖には、刻まれた水平歩道がず〜〜〜っと続いているのが遠望できて、早くもうんざり感が…。*写真(4)
最初こそ「高ぇ〜」とか「怖ぇ〜」とか感情にも起伏がありますが、ずっとそういう道が続くもんだから結局その単調さにやがて麻痺して何も感じなくなります。志合谷に差しかかるまではこれが続き変化は現れません。
雨はしとしと降り続いています。雨具を付けるも暑苦しくてすぐに脱ぎました。こーゆー合羽を着るか着ないか微妙な降りってのはいらいらします。降るんなら降る、晴れるなら晴れるではっきりして欲しい。
12:55、志合谷。
志合谷では素掘りの長いトンネルを通ることになります。中は完全に真っ暗でホントに何も見えなくなるので、ライトを忘れると苦労しそうです。ヘッデンの光が当たるとトンネルの岩肌がきらきら発光し、ヒカリゴケか?と一瞬思うも白いし直接照らさないと光らないから違うか。岩に含まれる何かの結晶みたいなのが光を反射するのでしょう。*写真(5)
志合谷は隧道工事の時に宿舎があった場所なので下りて見に行ってみたかったけど、時間と体力を消費したくなかったので我慢。ちなみに、志合谷にもありましたが水平歩道のあちこちには谷に下りる電力設備の保守点検道がいくつもあります。*写真(6)
13:20、大太鼓。
志合谷を過ぎて次のアトラクションは大太鼓となります。ここでは空中に突き出す岩に刻まれた細い道を通らねばなりません。いい加減高さに感覚が麻痺してても足元を覗き込むとさすがに腰が引けます。*写真(7)