登山&のら湯-山道のあっち側

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自分は"我慢""根性""努力"という言葉は嫌いなんす。とか強がり言ってみせたって、若い頃とは違って気力だけではどうもならん年齢になってしまったってのは、ごまかしようのない現実なんですが。

まあ若さに任せてがんがん登るなんてことはできなくなっても、それならそれなりの登り方ってのがあるもんです。工夫次第で疲労を大幅に抑えることが可能になるわけですが、中でも一番基本的なことで登山の歩き方というものがあります。

平地の歩き方と登山の歩き方の違い

平地での歩き方をそのまま登山に持ち込むと、無駄な力を消費して非常に疲れます。平地では横方向にだけ推進力を使いますが、登山では上方向に身体を持ち上げるという作業も発生しているのですから、当然のことながら歩き方を変える必要があります。

平地の歩き方

歩き方を分析しますと、まず片足を前に出して着地。この時に重心は前後に開いた脚の中間くらいにあります。次に後ろ足を蹴って重心を前に移し、その勢いで後ろ足を前方に振り出し着地します。つまり後ろ足で蹴ることが推進力になっています。

平地での歩き方はかかとから着地していることに着目して下さい。足を伸ばしてかかとから着地するということは、自分の重心より前方に足を置くということで、すなわちそれば進行方向に対してブレーキになります。蹴って止まって蹴って止まっての繰り返しをしているので、効率の悪い歩き方となっています。

登山の歩き方

山では体重移動で歩くということをします。身体を前方に倒して行くと倒れないように自然に片足が前に出ます。この時に重心は前脚に乗っています。さらに身体を前に倒すと後ろ足は自然に地面から離れます。そして重心の移動に合わせてその脚が今度は前に出ます。つまり推進力は体重移動で得ているわけで、決して後ろ足で蹴ったりしません。

後ろ足で蹴ることはエネルギーを浪費するのみならず、足を滑らせやすく、また落石を起こしやすい歩き方です。上手く歩けているかどうかは泥道を歩いてみるとわかります。後ろ足を蹴らない歩き方では泥の跳ね返りが少なく、ズボンの裾の後ろがあまり汚れません。

ベタ足歩き

かかとから接地するということは、体重を地面に向かって斜め前方にかけているということです。なので滑りやすいのですが、特に下りで腰が引けると角度が浅くなってするっと滑ります。スキーで腰が引けると板が先走って後ろにコケますね。それと同じです。

着地は足裏全体でべたっと下ろします。体重は地面に対して直角に、真上から乗せます。つま先から下ろすくらいの気持ちでいるとちょうど足裏全体から地面に接地します。

後ろ足で蹴るという動作も非常に滑りやすい動きです。体重が前脚に乗れば後ろ足で蹴る必要は全くありません。蹴らなくても自然に地面から離れます。

氷の上など非常に滑りやすい所を歩くと良い練習になります。かかとで着地することも後ろ足で蹴ることも、どちらも滑ってとても歩けたもんじゃありませんね。例えば慎重に歩こうとした場合、滑るのが怖い気持ちが先に立って腰が引けたまま足を前に出し、その足が地面に付いてから身体を前に持って行こうとする。後ろ足で重心を移動させようとするから蹴る動作が発生してしまいます。これでは滑って当たり前です。また逆に滑るとは思わずにすたすた歩こうとした場合、かかとから地面に付いた途端につるっと滑る。体重が斜め前方にかかるから、これも滑って当たり前です。足が前に滑るということは、滑り難い地面ではブレーキがかかってるということです。前に出した足が地面に付く時には体重はその足に垂直に乗っていなければなりません。

膝を柔軟に

膝は最高に伸ばしても少し曲った状態にします。ぴんと伸ばしてつっぱることはしません。膝をつっぱらせて歩くと、いざ滑ったりした時に咄嗟にバランスを立て直せなくなります。また、垂直に足を下ろせないので平地歩きと同じようにかかとで歩いてしまいます。とても滑りやすい歩き方です。

膝を曲げることによって、着地のショックを和らげる効果もあります。膝のバネで衝撃を吸収するのです。結果的に疲れ難く、また膝を壊し難い歩き方でもあります。

歩幅

上記の歩き方をしてみると脚を大きく開けないことに気付くと思います。歩幅が小さいのでこれではスピードは出ませんが、それで良いのです。登山では自分の体重を上へ上へと持ち上げて行く必要もあります。平地と同じスピードで歩こうと思ったら、その何倍ものエネルギーが必要になることは自明の理です。

歩幅を大きくしようとすれば、一歩で大きなエネルギーを消費します。距離が同じならその距離を10歩で行こうが20歩で行こうが結局疲れは同じになるんじゃないの?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。例えば1メートルを1歩で行くのと2歩で行くのと比べてみて下さい。2歩の方が楽ではありませんか?

もちろん人によって歩幅の最適解は違ってきます。歩幅を小さくし過ぎて歩数が多くなり過ぎればそれはそれで疲れます。また、坂の傾斜角によっても楽な歩幅は変わってきます。色々歩き方を変えてみて自分にとっての一番疲れない歩幅を探してみて下さい。