登山&のら湯-山道のあっち側

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温泉好きの登山入門ということで、まず山での温泉利用注意点ですが、基本的に石鹸類は使えないと思っていて下さい。石鹸の自然分解には非常に時間がかかり、石鹸類の使用を許すと深刻な汚染が広がってしまいます。大半の風呂付きの山小屋では石鹸類の使用は禁止されています。使用禁止が明記されていない場合でも、使用できないと思って下さい。石鹸使用可能と明記されている以外は使用禁止です。

早出早着

どんなことで思いがけず手間取るかなんて予測不可能です。予定には必ず余裕を持たせて、夏でも午後3時、秋なら遅くとも午後2時には予定地に到着できるよう計画を考えた方がいいと思います。日帰り往復だと出発はかなり早い時間になるかもしれませんが、安全マージンと思えば仕方ないことです。

若かりし頃のことですが、尾瀬から下山する途中で日が暮れてしまったことがあります。その頃はヘッドランプなんて物は持っていませんでしたが、幸いミニマグライトをいつも持ち歩くようにはしてました。なんとか足元を照らせたことと尾瀬は木道が整備されてたから歩くことが出来ましたが、もし持っていなかったら足の置き場さえ見えず進めなくなるところでした。本当に真っ暗なのです。ライトがあってさえ景色なんかろくすっぽ見えないので、どの辺を歩いているか皆目わからない状態でひたすら木道を辿って下りました。甘かったっちゅうかバカだったっちゅうか…。尾瀬だから良かったものの、普通の登山道で始めての道なのに日が暮れてしまうなんてことは、できるだけ避けたいものです。

欲張り過ぎてやばい状況に追い込まれることはありますが、早過ぎて困ることなどありません。例えば泊りだったなら、たまには昼12時くらいに行動を終えて山の中でのんびりするのもいいものです。

挨拶だとかなんだとか

山での挨拶

山ではすれ違う人が大抵「こんにちわ〜」と挨拶を交わします。バイクツーリングのライダー同士がすれ違う時に手を上げて挨拶を交わすのとまあ同じことです。特に山ではそもそも人が少ないとこで素性のわからぬ他人と袖触れ合うのですから、そりゃ挨拶でもしなけりゃ気味が悪いですわな。それが捜索の手掛かりになったりすることもあります。ただ、相手が20人とかの集団だと正直勘弁して欲しくなります。

登山道でのすれ違い

登山のマナーで登り優先ということが言われます。登りの方がキツイのでリズムを崩したくないし再発進にもより大きな力を必要とするため、止まらない方が楽だという考えから発生したものです。

ただ、別に道路交通法で決められているものでもないので、状況次第であるということも念のため言い添えておきます。下ってくる相手に逃げ場がなさそうなのに、登り優先じゃ〜と我を貫いても仕方ありません。自分の方が安全に避けられそうなら登り側が譲ったって全然構わないことです。

もし団体だったら、登りであれ下りであれ、適度にグループを分割して相手を長時間待たせないように気を遣いましょう。リーダーが上手に指揮をとって下さい。

おっさんの自慢話

山には色々な人がいます。話し好きのおっさんかと思ってたらやたら自分の山歴とか自慢してくる人もいます。行った山の数だとか、コースタイムより何時間早く登っただとか、そういう自慢してくるオヤジに限ってマナー的には最悪だったりしますので、この人はベテランなんだ〜なんて感心してその人の行動を参考にするようなことのないようにお願いします。本当のベテランは確かな経験の裏打ちがあるので自らひけらかすようなことはしないものです。

他人の情報

他人の言うことをまるまる信じることはやめた方がいいかもしれません。もうすぐ山頂だから頑張れとか言われても大抵はもうすぐなんかじゃありません。親切に近道を教えられてそっちに行ったら遭難した例もあります。基本的に全て自分で検証しなければいけません。山では助け合うことが重要とはいえ、善意ではあるが無責任な言葉というのも多いものです。

もちろん、自分の向かう方向からやって来た人に登山道の様子などを聞いて情報収集するのは良いことです。新鮮な最新情報が得られます。ただし、相手が1時間前に通った状況と、自分がさらに1時間後に通る状況は変わってしまっているかもしれません。あくまでも参考であって、自分の行動に責任があるのは自分自身です。まあ相手に責任をなすりつけるなということです。

キジ撃ち

猟師がキジを鉄砲で狙う姿に似ていることから、うんちょす君を爆撃することを言います。小と大を区別して、小キジ・大キジと使い分けることもあります。女性の場合はもっと綺麗に「お花摘み」。

出物腫れ物ところ構わずとはいいますが、海外の国立公園では持ち込んだ物は全て持ち帰らなければならないという厳しい法律の所もあり、そこではうんちょす君も例外ではありません。日本でも登山人口が大幅に増え、ひと昔前とは比べ物にならないほど排泄物による環境汚染が深刻になってきていますので、いずれ海外並の法律が施行される日がくるのかもしれません(日本でも尾瀬ではトイレ以外での排泄は禁止されています)。まあ、とりあえずはそうなっていない今を感謝しましょう。

山小屋周囲の沢は大腸菌で汚染され飲み水には適さないといいます。人間が多過ぎて自然で浄化できる量を遙かに超えた便が投棄されていたわけです。しかし近年はバイオトイレで浄化設備を設けたりヘリで便を運び降ろしたりと、環境保全に力を入れる山小屋が増えつつあります。なので、うんちょす君お持ち帰り条例なんてものができないためには、基本的に山小屋などに設置されたトイレを利用することが重要です。やたらあちこちでノグソをたれるのは控えるべきでしょう。

かといってうんちょす君はどんなに言い聞かせても待ってくれない場合もあります。そうなったら仕方ありませんね。せめてできるだけローインパクトを心がけてうんちょす君の拘束を解いてあげるしかありません。

うんちょす君を深く埋めてしまうと分解が遅くなるので、穴はあまり深く掘らないように。かといって埋めなければそりゃ分解は早いでしょうが、だいたい誰も考えることは似ているもので、選ぶキジ場っていうのは同じような場所に集中しがちですから、そこで野ざらしになっている他人のうんちょす君を見るのは気分のいいものじゃありません。まあ埋めてあったとしても、誰かのうんちょす君を掘り当ててしまう可能性もなくはないってことですが。

紙は水に溶けるものであっても何年も分解されないものですから、これはお持ち帰りして下さい。皆が紙を放置して行くと、キジ場が半溶け紙の白いお花畑になってしまいます。高尚な正義感をお持ちの方でしたら、もちろんうんちょす君もお持ち帰りすることを止めはしません。是非持ち帰って下さい。

山に設置されているトイレは有料になっている場合があります。処理するために少なくないコストがかかっているわけで、自分のものを他人に託すわけですから、いくばくかの小銭をケチる理由でノグソをするなんてことのないようにお願いいたします。

環境の保全

環境保護を訴えるなら登山なんてするなよっていうのは間違っていませんが極論です。「環境だエコだって言うならお前電気とか一切使うな。俺は偽善者じゃないから使いたいだけ使う。」などとカッコイイこと言ったつもりになるのは、まあお子ちゃまです。ネバーランド探しに旅立って下さいと言う他ありません。尾瀬や上高地などは環境保護のため規制を強める一方で観光収入源として道路の拡張を行ったりしてるわけでして、それを偽善だと言うのは容易いですけどね。多くの矛盾を抱えながらその中で最善を尽くすのが大人ってもんです。

ゴミ

富士山が糞尿ゴミまみれなため世界遺産に登録されなかったことは有名な話です。多くの山で人間が多過ぎるために自然が自然であれるキャパを完全に越えた状態になっています。一人一人が高い次元でモラルを持たなければ、それこそ総量規制に頼るしかなくなります。

山に持ち込んだものは何ひとつ置いてくることなく持ち帰って下さい。あめ玉の包み紙ひとつであってもです。山小屋のごみ箱に捨てるのはいいだろうと思う人は多いかもしれませんが、自分の持ち込んだ物は最後まで自分で責任を持って下さい。自分が辿った辛い道程を誰かが担いで降ろすか、あるいは大金をかけてヘリで降ろすかしないとならないのです。自分のケツは自分で拭きましょう。

登山道を外れない

カッコつけてるのか何なのか、登山道をショートカットしてしまう人がいます。何人もがショートカットした所は土がえぐれ、道のようになってさらに多くの人がそこを通ることになります。登山道は最小限の必要悪であり、その被害を拡大するようなことは極力避けた方が良いです。道を踏み外して幅を広げることも同じです。写真の構図ばかり気にして登山道外に踏み出すのも同罪です。

手を加えない・壊さない

高山植物を摘むのは犯罪です。木の幹に相合傘を刻むのはバカ者です。自分が来た痕跡を一切残さないのが良い登山者です。野湯にしても、湯船を掘ったり拡張したら必ず自分が手を付けた部分は埋め戻して下さい。

わざわざ辛い思いをして嫌々登っている人はいないと思います。ならば自分の遊び場なのですから、規制規制で大切な遊び場をつまらないものにしてしまうなんて嫌ですよね。

野生動物

絶対に野生動物に餌を与えないで下さい。また、餌になるようなゴミを放置して行かないで下さい。楽に餌を得る方法を見つけると、野生動物はその方法に固執します。人間を襲撃してでも餌を手に入れようとし始めます。それをやめさせるには殺すしか手段がありません。日光の猿が頻繁に人を襲うのも、無責任なバカ観光客が餌を与えることと、ゴミの不始末が原因です。

野生動物が人間を襲う襲撃事件は、原因を辿れば大半が(というかほぼ全て)人間の側に責任があります。あのとても友好的と思われているイルカでさえ、下手な餌付けのせいで人間を襲うようになった例がいくつもあります。

ゴミを捨てたり放置しない、野生動物に餌を与えない、とても簡単なことです。

どんなに愛くるしく見えても野生はペットとは違い、思わぬ危険性を秘めています。野生動物には近付き過ぎないことも忘れないで下さい。彼らに干渉するのはやめましょう。