登山&のら湯-山道のあっち側

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面倒臭がりがなんでトレーニング?と思うのはまだ甘い、それは面倒臭がりとしては並レベルです。

例えば年末の大掃除を考えてみて下さい。溜まりに溜まった汚れ、散らかった物、全て綺麗に片付けようと思ったら丸一日作業です。いや、一日では終わらないかもしれません。疲れるし面倒臭いことこのうえないですね。

出した物は用が済んだら片付ける、汚れを見つけたらその場でさっと拭く。常にそうしていれば、年末の大掃除でやることなんてどこもありません。ほんの数秒でできることです。どっちが楽か言わなくてもわかりますね。

面倒臭がりも極まってくると基本的にこういう考え方をし始めます。長い目で見て総合的にいかに面倒臭くなくするか、ということを考えるのが楽する秘訣です。

登山向きの体形

シェルパの体形

ヒマラヤの登山支援を生業としているシェルパですが、その体形は驚くほど華奢に見えます。しかし登山シーズンが始まると悪条件の中ルート工作を行いながら、シーズン最初に登頂するのがシェルパです。大量に荷揚げを行い、また遭難があれば救助に駆けつけ、シーズン中何度も登り下りを繰り返します。彼らの小さい身体のどこにそんなパワーが秘められているのか、外見だけでは想像できません。

著名登山家の体形

8000m峰無酸素登頂と全14座登頂の記録を持つラインホルト・メスナーは、ヒッピーのようなむさい顔つきとでかい手の割に随分スリムに見えます。エベレスト初登頂のエドモンド・ヒラリーもひょろっとしています。まあクルト・ディームベルガーみたいな例外はあるものの、レナート・カーザロット、イエジ・ククチカ、ワンダ・ルトキェヴィッチ、むきむきのアスリートとは全く異なる体つきをしています。シルベスタ・スタローンみたいな体形は見たことがありません。

最大パワーは小さくて良い

筋肉には速筋繊維と遅筋繊維の二種類があります。速筋は瞬発力、遅筋は持久力に優れます。短距離走の選手は速筋の割合が70%、マラソン選手は遅筋の割合が70%だそうです。一流登山家の割合はマラソン選手と同じく遅筋が70%。

登山家の体形はどちらかというとマラソン選手に近いといっても、しかしあれほど削ぎ落とされた身体でもありません。他のアスリートで重要なピークパワーは必要とせず、限られた食料で長時間エネルギーを使う登山という特性があの身体を作るのでしょう。

基礎代謝量は筋肉量によって左右されます。筋肉を増やし過ぎれば基礎代謝量が大きくなって、動いてなくても燃料をバカスカ食います。さらにムキムキの身体で体脂肪率が10%を切ってたりすれば、蓄えの燃料も少ない状態です。しかも環境耐性も低い。寒さを防げないから筋肉が動いて熱を作るしかなく、そして大量の燃料を消費する結果になります。

色々調べたり試したりして最終的に自分が出した結論は、筋力はさほど必要ない、でした。そりゃなまってればダメですけど、ある程度以上頑張っても努力ほどの見返りはありません。ほどほどで充分だったのでした。

登山に効果的なトレーニングは登山

登山に効果的なのは持久力を向上させるトレーニングであると言えます。ランニング、自転車などが向いている運動ではあります。

自分も通勤を自転車に切り替えて、トレーニングがてらフルパワーで通っていました。なんせ毎日ですから大腿四頭筋はみるみる盛り上がり、数ヶ月でいかにも力強そうな脚に変わりました。ところが、どんだけ楽になったかと登山に行ってみると、まったくの期待外れ。確かにだいぶ楽にはなったので効果がないことはないのですが、こんだけ筋肉が付いたのにという思いとは裏腹にしっかりと筋肉痛になりました。なぜでしょうか?

脚の筋肉の運動には、膝を伸ばす時に縮みながら力を発揮する短縮性収縮と、膝をゆっくり曲げていく時に伸びながら力を発揮する伸張性収縮があります。登山には登りと下りがあります。下りの運動は伸張性収縮となり、自転車では発生しない運動だったのです。そして、短縮性収縮のトレーニングでは伸張性収縮の能力向上はありません。

一般的な筋力トレーニングで、この伸張性収縮での能力向上を目指したプログラムは殆ど見かけません。せいぜいが体力測定の時に行う昇降運動がそれに近いものでしょうか。しかも、登山はマラソンのように1〜2時間で終了するようなものではなく、時には10時間以上も続く運動です。結局、最も登山に有効なトレーニングってのは、登山することという結論になりました。

筋力を落とさないことが主眼

最小の労力で最大の効果を、と考えるのが怠け者の怠け者たる所以です。苦しい思いをしてもさほどの効果が望めないなら、やる価値がありません。

しかし社会人たる者、毎週のように山へ通うなんてのは実現困難です。せめて月二回程度でも行ければ、毎回の登山はかなり楽にこなせるようになるのですが、働き盛りと言われて会社でこき使われる身となってしまっては月一回ですら難しいことでしょう。

数ヶ月に一度の登山では、登山の度に毎回々々筋肉痛です。行かない間にすっかり筋肉は元に戻ってしまってるのです。であるならば、次の登山まで出来るだけ筋肉を衰えさせなければいいのです。そうすれば登山の回数が少なくても行く度に能力を向上させることだって可能な筈です。きっとそうです。

トレーニング頻度

三日ごとのトレーニングが最も効果が高いとされています。筋力のアップを目論むならそうした方が良いでしょう。でも三日ごとというのはちょっと負担が高いかも。

個人差があるでしょうが、自分は週一回にしています。筋力を落とさないことが目的ですから、これでなんとか大丈夫です。これ以上一日でも日が開くと、トレーニングで筋肉痛が出るので、筋力が落ちてしまったことがわかります。

ハーフスクワット

一時期、ザックに重りを入れて14キロ担ぎ、フルスクワットを150回していました。そこまで苦しい思いをしたんだから相当楽になった筈だと実際に登山に行ってみると、想定外の疲れです。確かに登りが多少楽にはなりましたが、登山が終わった後にはしっかり筋肉痛が出ました。結局のところ、瞬発力を一生懸命鍛えてたわけで、実際の登山で使う筋肉はたいして鍛えられてなかったんですね。しかも、これは膝に負担をかけるトレーニングですから、膝があまり良くない自分には不向きでした。

今は両手に2キロずつのダンベルを持ってハーフスクワット300回というのをやっています。登山では上半身の筋肉も意外に使うので、背筋もついでに鍛えるためにハーフスクワットで膝を曲げた時に床に手をつきます。重心が前になると膝を痛めるので、手をつく位置はかかとの横にします。これで大腿四頭筋と同時に背筋も鍛えられます。なお、下りに使う筋肉を衰えさせないために、特に膝を曲げて行く動作はゆっくり行います。

これだけです。週一回ハーフスクワット300回。あれこれやろうとすると心が折れてしまうので、なるたけひとつのことだけで済ませてしまおうと思った結果です。

膝痛・腰痛にならない為のトレーニング

膝や腰は一度痛めてしまうと完治することのない嫌な傷害です。半月板の損傷やヘルニアなどは症状が酷くなれば手術するしか方法がありません。しかし、トレーニングによって症状を緩和することはできます。また、まだ痛めてなくてもトレーニングしておけば痛めてしまう可能性がぐんと減ります。

但し、痛みが酷い場合は安静にしないとまずいので、ある程度痛みが治まってからトレーニングを始めた方が良いと思います。原因によってはやっちゃいけないトレーニングもあるかもしれないので、きちんと診察を受けて原因を調べてからにしましょう。

膝痛緩和トレーニング

膝痛は大腿四頭筋の筋力低下で発生しやすくなります。大腿四頭筋のトレーニングにより膝痛が起き難くなります。

トレーニングで注意しなければならないのが、膝に負担をかけると症状を悪化させてしまうということです。ランニングなどは危険です。

自分がやっているのは脚上げです。仰向けに横になり、片足の膝を立て、反対の伸ばした脚を伸ばしたまま10cmほど上げて5秒間静止します。これを20回〜40回。反対の脚も同じようにします。毎日やっていますが、ついでに腹筋も鍛えとこうと思って、脚を上げるのと一緒に頭も持ち上げています。頭を持ち上げるだけで結構腹筋を使います。

腰痛緩和トレーニング

腹筋が衰えると腰痛が起きやすくなります。背筋も関係ありますが、普段の生活で背筋は結構使うものなので、腹筋が衰え過ぎて背筋とのバランスが悪くなることが良くないようです。とは言っても、腰痛には全身の筋力のバランスが大切ですので、色々な運動を取り混ぜて全身まんべんなく鍛えるのが一番良いのだと思いますが。

腹筋を鍛える手軽な方法です。まず仰向けに寝て両膝を立てます。頭を持ち上げて手を膝に届く位まで伸ばし、5秒静止します。これを20回〜40回繰り返します。

日常生活でのトレーニング

トレーニングしなきゃと気負うと人間どうしても怠け癖が出てしまい続かないもんですから、日常生活の中で普段の行動をちょっと筋肉を使う方向に切り替えてやるのも賢い方法です。

階段の登り下り

登山の運動に近い動きといえば、やはり階段の登り下りです。できるだけエレベーターやエスカレーターでなく階段を使えば、それだけで結構なトレーニングになります。階段をつま先を引っかけるだけで登れば、ヒラメ筋も鍛えられて一石二鳥です。下りの筋肉を鍛えるためには、階段をゆっくり下ります。駆け降りてしまうとトレーニング効果はあまり期待できません。じわっと負荷をかけるように下りて行きます。

自転車通勤

通勤は強制的に身体を動かすチャンスでもあります。いつも乗っている駅から数駅先までを自転車にしてしまえば、かなりなトレーニング効果が期待できます。定期代も若干安くすることもできますしね。前述したようにフルパワーで漕ぐ必要はありません。だいたい30分くらいをフルパワーの4割以下程度の負荷をかけて漕げば、持久筋を鍛えることが出来ます。残念ながら自転車では下りの筋肉は鍛えられませんが、登りに対する効果は絶大です。