【写真(1):薬師沢小屋前の吊り橋を渡る】
1時間近く休憩の後、出発。小屋前の吊り橋を渡り対岸へ。切り立った崖っぷちの僅かな岩棚にハシゴがかけられており、でかいザックを背負っていると方向転換するのが結構怖かった。そこを下りて薬師沢の川原へ。
【写真(2):大東新道との分岐を雲ノ平方面へ】
ほんの少し進むとすぐに大東新道と雲ノ平方面への分岐が現れる。登り始めからきつい傾斜。
【写真(3):急登が続く】
とにかくきつい登り。登り行程中の殆どが、足だけでなく手も使わなければ登れない。それが行けども行けども続くのだ。
急登ということは知っていた。しかし予想外に悪かったのは行程中ずっとこの積み重なった大岩を登らなければならないこと。ここは20kg超えのザックを背負って登るもんじゃない。半分も行かないうちにへとへとになった。ただの急登だったらこれほどへばることはないのだが、とにかくこの岩は厄介で疲れる。天泊に固執しないで小屋泊まりの軽い荷物で来るべきだったか、という後悔も頭をよぎる。
【写真(4):歩き難い急登がいつまでも続く】
しかもこの岩、角が落ちて滑りやすい。実際、二度ほど滑ってコケた。コケ方が悪ければ数メートルは落ちるかもしれないだけに、肘をすりむく程度で済んだのは幸い。
ツレは登りには強かった。ソールの先がクライミングゾーンになっている新調したばかりの靴のおかげか、コケることもなかったし。またもや先にこっちがバテたせいもあってか、疲れ知らずに見える。
登れど登れど終わりの見えない岩地獄が続き、ペースも上がらず時間が16時を過ぎる頃には、もう雲ノ平でテントを張る気はキレイさっぱり失せていた。雲ノ平山荘に泊まることを決める。
山荘泊まりを決めたのはいいが、気掛かりになったのは夕食に間に合わなくて素泊りになってしまうこと。今さら自分で食事を作る気力も起きない。そこでツレを先に行かせることにした。さんざ遭難本を読ませたツレにはわかっていたと思うが、パーティーを分けるというやってはいけないことの第一に挙げられる行為だけど、この先は分岐の無い木道が一本だし、迷う箇所もないだろうと。こちらはツレが迷うかどうかだけを心配をしたが、ツレはこちらがコケるのを見ているだけに逆にこちらが途中で落ちて辿り着けないのじゃないかという方を心配したらしい。
【写真(5):登り切るとそこから木道が続く】
ひとりになってゆっくり登り、どうにかこうにか急登を登り終えることができた。そこから木道が続く雲ノ平の一角に足を踏み入れる。
【写真(6):アラスカ庭園】
空は薄暗くなり始める。
アラスカ庭園まで来るものの、景色に感動する体力的な余裕が全く無い。胃が水を受け付けなくなっており、またもや脱水気味。
【写真(7):水晶岳を背負う雲ノ平山荘】
後光が差すように浮かび上がる水晶岳を背負って、白く光る点が雲ノ平山荘。本当なら美しさに感動する場面だが、そんな感情は起こらず、あまりの遠さに気も遠くなる。
雲ノ平山荘の左側に見える丘の小ピークは、2576mの無名ピーク。明日行く予定の高天原へ向かう道はこのピークを踏んで先へ進む。なんでわざわざてっぺんを踏んでから下りなきゃならんのか、多少回り道になってもピークを巻けばいいのにとは思う。
【写真(8):奥日本庭園】
水晶岳を含めいかにも北アルプスらしい山容の峰々が取り囲む展望の奥日本庭園。山好きならゆっくり楽しみたい景色。なんだけど17時45分、つるべ落としに暗くなり始め、そんな余裕は全く無し。
【写真(9):雲ノ平山荘】
18時ちょっと過ぎ、雲ノ平山荘に到着。もうへとへと。
心配顔のツレが山荘の前で待っていた。